暑い。
こんな日は美味い蕎麦が食べたくなる。
神田のやぶそばでも良いけれど、その近くにある「眠庵」というお店が気になったので事前に予約して行ってみた。
それにしても店の入り口がかなり難関だ。民家とマンションの間にある細い路地の奥に店舗がある。しかも店舗は古い民家を居抜きで使っているので、本当にこの玄関から入って良いの?と不安になるのだ。
道路からの入り口はこの路地
中に入るとカウンターの他には四人掛けのテーブルが2組と二人掛けのテーブルが1組。今日は予約してあるので奥の二人掛けテーブル席に案内されたがあっという間に満席になった。日本酒を嗜みながら蕎麦を頂くお店らしくまずは飲み物を聞かれたが、私たち夫婦は飲めないのでお茶をお願いした。
とはいえ飲めなくても酒の肴は好物なので気になったつまみを一通り注文だ。
まずは自家製豆腐(320円)だ。大豆の旨味がストレートに出ていて市販の豆腐と比べたら濃さが雲泥の差だ。これは醤油を掛けては勿体ないので塩で頂いた。
次はおから煮(320円)
きっと先ほどの豆腐を作ったときに出たおからなのだろう。こちらも旨味がぎっしり詰まっていて美味い。よくあるおから煮はもっと水分が多くベチャッとしていることが多いが、このおから煮はしっかりと水分を飛ばしてある。しかも蒟蒻やニンジンといった具が入っていないのに十分満足出来るのはおから自体の美味さ故だろう。
続いて、牛肉と大根のバーボン煮(650円)
バーボン煮と言ってもアルコールはしっかりと飛ばされているので、お酒が全くダメな私でも問題なかった。肉の下は旨味を吸い込んで煮込まれた大根だ。箸でほろっと切れる柔らかさ。肉自体も美味かったが大根が逸品だ。
大豆物が続くが、自家製納豆(220円)
大粒の大豆で作られているのは自家製ならでは。工場物ではどうしても小粒になるので歯ごたえのある大豆から納豆独特の旨味が感じられた。
そして珍味のうるか(320円)
鮎の内臓から作られていて非常に苦い。ひとつまみだけできっと何杯も酒が進むのだろう。癖になる苦さで止められない止まらない。うるかはなかなかお店で見かけることが無く、常設メニューで載っている店を訪れたのは初めてだ。
ここまで一通り食べたところで予め「時間が掛かりますがよろしいですか」と注文時に確認されていた、だし巻き玉子(540円)が登場だ。若干、出汁が薄めに感じたが直前に食べたうるかが舌に残っていたからかもしれない。これも十分に美味いので食べるべき一品。
ここで酒の肴は全て出尽くしたので一区切り。板さんが蕎麦で使う薬味を運んできてくれた。運んでくる前に大根と山葵をゴリゴリと下ろしている音が聞こえてきたので新鮮だ。
薬味に続いてつゆもやってきた。
そして待ちに待った、お蕎麦「二種もり(1,190円)」が運ばれてきて役者が全てが揃った。
蕎麦からは良い香りが漂い、しかも美しい艶だ。つゆにドボドボつけずに啜るようにしたところ、蕎麦自体の香りが口から鼻に抜けていく。
1種類目が食べ終わったタイミングを見計らって、二種類目がやってきた。こちらは香りは弱いけれどもコクが強くて一種類目とは全く違っていた。蕎麦の産地によってここまで違うというのも面白い。
最後の締めはそば湯。ちょうど良い塩梅に薄めてつゆも全て飲み干してしまった。
これで終わりにするのには後ろ髪が引かれる思いなので、そば湯だけでも頂いてみた。
酒の肴から蕎麦を二種類食べてちょうど1時間、二人で6,000円。このクオリティでこの値段は安いと言わざるを得ない。また訪れたいが予約を取ることが難しいのが難点だ。
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